そもそも…

市場にニーズが明確に存在しているのに、競合・ライバルがいない独占状態があり、その状態がずっと続いていくとしたら、わざわざマーケティングなんて考える必要はないかもしれません。
 

でも、実際にはどんな市場でも強い競合・ライバルがいます。
 

事業を行う上で、優位になるリソースを豊富に持った強いライバルも多いでしょう。
 

例えば、知名度や実績、安く提供できる仕組み化、広告費を潤沢に使える資金力、好立地の店舗展開、優秀な人材、SEOの検索上位など。
 

市場の弱者は、そのような強い競合と正面から戦っても負けてしまいます。
 

ここでいう「負ける」というのは、「お客様から選ばれない」という意味です。
 

お客様は一番都合の良い選択肢を選ぶ

どの商品・サービスを選ぶかはすべてお客様に決める権利があります。
 

悩んで、迷って、探して、調べて、比べて、購入して、利用するのはいつでもお客様だからです。
 

だからこそ、お客様の立場になって商売を設計し、実践するマーケティング戦略思考が重要です。
 

では、お客様は何を考え、どのような基準で商品・サービスを選んでいるのでしょうか?
 

これは、時代・業種・地域を問わず、たった1つの基準で選んでいます。
 

それは何かというと…
 

「そのお客様にとって、一番都合が良いかどうか」です。
 

お客様はどんなときでも必ず「選ぶことができる選択肢の中で一番都合の良い選択肢」を選びます。
 

例えば、「同じような商品」を「同じような条件」で購入する場合を考えてみましょう。
 

あなたなら「高いお店」と「安いお店」のどちらから買いたいですか? 
 

同じような条件なら、きっと「安いお店」が良いですよね。
 

では、「同じような商品」を「同じような価格」で買う場合ならどうでしょうか?
 

同じような価格なら、別の選択肢よりも「近い」「便利」「口コミが良い」「お店がキレイ」といった「より良い条件」で買いたくないですか?

そのような「より良い条件」「より安い価格」を高いレベルで実現できるのは誰でしょうか?
 

それは、市場の強い競合です。

つまり、市場強者と同じような商売を設計し同じように頑張って勝負しても、勝てないということです。
 

強制的に比べられて負ける

このような話をすると、「あの会社は競合じゃないです!!!」と、多くの経営者の方がおっしゃいます。
 

しかしそれは、売り手目線に陥ってしまっています。
 

あなたの競合かどうかを決めるのは、売り手のあなたではなく「お客様」だからです。
 

どれだけあなたが「あの会社とは違う!」「うちの製品は特別だ!」と思ったところで、お客様が商品・サービスを選ぶ際に、強い競合と比べているのなら、残念ながら競合になります。
 

「このお客様を狙おう!」「理想的なお客様はこんな人!」というように、理想のペルソナ設定だけは売り手である僕たちでもできます。

しかし、その狙ったお客様が「どこと比べているのか?」までは、売り手が決めることはできません。
 

つまり、競合というものは、僕たち売り手が設定できる類の話ではないということです。

そういったことを知らずに事業を行うと、強制的に強い競合と比べられて、知らない間に負けてしまいます。
 

その結果、「チラシを撒いて、YouTubeを頑張って、SNSやブログを更新して、人手を使い、お金を使って、これ以上ないくらい頑張っているのに、お客様がこない!」といった負の状態に知らぬ間に陥ってしまいます。
 

小さい市場でトップになる

資本力やブランド力がない僕たち個人や中小企業の場合は、大きな市場でトップを目指すのは、現実的ではありません。
 

合わないお客様はあえて狙わず、強みが活きるお客様を「選択」し、そのお客様に対して、すべての努力の方向性を「集中」させることが大切になります。
 

それは時に、お客様になってくれたかもしれない人を切り捨て、売上のチャンスを狭めることにもなるので、怖い決断かもしれません。
 

しかし、小さく勝って選ばれることで、小さく着実に資金、実績、口コミ、顧客リスト、業績ノウハウなどの経営資源が蓄積していきます。
 

そうすると、さらに新しく人材を採用したり、店舗を増やしたり、新しいコンセプトで挑戦したり、事業を拡大していくことができます。
 

まとめ

どんな市場においても、強い競合が必ず存在します。
 

資金力、知名度、仕組み、立地、人的リソース…。僕たちのような個人や中小企業が、そんな市場の強者と正面から勝負しても勝てません。
 

なぜなら、お客様は常に「お客様は一番都合の良い選択肢を選ぶ」からです。安い・近い・便利・信頼できるなど、比較されたときに勝てなければ、どれだけ想いや努力があっても選ばれません。
 

しかも競合を決めるのは売り手ではなく、「お客様」です。僕たちがどんなに「他とは違う!」と思っていても、お客様が他社と比べていれば、それは立派な競合になります。
 

だからこそ大切なのは、「広く狙う」のではなく、「小さく勝つ」こと。合わないお客様を狙わず、強みが活きるお客様に向けてすべてを集中させる。小さな市場で選ばれることが、やがて経営資源を蓄積し、事業を拡大させることができます。
 

次からは、「戦略設計」の考え方である戦略5原則を紹介していきます。